低速少年と高速少女

Green Ray

Ⅰ.12歳と12歳

「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー」

 20XX年、11月3日。12歳の誕生日。

「ハッピーバースデーディア、うーみくーん」

 ろうそくの火を反射して浮かび上がる、『誕生日おめでとう! 海太くん』と書かれた、ケーキのチョコレート。

「ハッピーバースデートゥーユー」

「おめでとう!」

「消して、消して」

 母親と父親がろうそくの火を消す催促をする中、頭の中では同じ誕生日の女の子のことを考えていた。

 あの子も、誕生日会の真っ最中だろうか。



「ハッピーバースデートゥーユー」

 ふうっと、ろうそく12本分、火を消す。

「おめでとう、あっちゃん」

 ママがそう言って、私にクラッカーを鳴らしてくれる。

 イチゴジャムで、器用に『Happy Birthday 明梨あかり』と書かれた、ママの手作りケーキ。

 あの子の家は、お店のケーキなのだろうか。

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