~♡勇者と魔王シリーズ~

藍上(あいがみ)おかき

おかして欲しい魔王様



「なぁ、ここでおかしてもらえないか?」


 俺が、剣や魔法も存在しない世界に魔王だった彼女と同居して早一年。


 この世界の言葉や文化、風習、人付き合いや一通りの社会生活を教えた激動の毎日。

 

 そんな激動の毎日でありながら読み書きソロバンを教え、それでも飲み込みの早い彼女は一年という短時間でこの現代社会である日本でそれなりに働き、それなりに人と対話することができるようになり、よく食べよく寝て、よく感情を剥き出しにしたり、たまにどこの国かわからない言葉を叫んだり、よくわからない単語を一言吐き出したったかと思えば、「闇の炎にのまれてしまえ!」 などと言ったりするが、ほんとによく頑張っているのがわかる。


 日本人や中国人のようにシロくて美しい肌色とキメの細かい肌質、元は真っ白だった白髪も環境の変化により黒髪に。

 

 元、魔王と呼ばれていたはずの彼女の子供のように可愛らしい顔立ちと体型。



 便宜的に血の繋がりがある遠い親戚ということで妹にはしてある。


 だけど、『おにいちゃん』 等と呼ばせてはいない。 


 

 「兄さん、おかしてください!」

 

 そう、ホントに子供のような刺激的な声色で『犯してください』 と言ってくる元魔王。


 

 魔法が飛び交い、剣と剣で火花をバチバチとあげ、拳でお互いを殴りあった異世界と呼ばれるファンタジーな世界では、この容姿からは思えない魔力と腕力。


 破壊と混沌を支配するような恐怖の象徴であった彼女。


 「お兄さん! もう無理だ!おかしてくれ!」


そんな元魔王の彼女は今では角もとれ、丸くなりしおらしくなったとはいえ、その腕力だけは健在していた。


 そんな腕力だけは健在の魔王が、この世界で性的に子作りするための擬似的遊びである性行為をもとめるように『おかして』 と言ってくるのだが、俺はそんな言葉を魔王に教えたつもりは一切ない。


 きっと、社会にでてどこかで覚えてきたのだろう!

 

 そんな事をおもいながら彼女が性行為を求める声に執筆していた原稿用紙の上で走らせていたペンを置き様子を見に行く。


 アパートの入り口で彼女は沢山の荷物を抱えている。


 大小様々な形の箱をグラグラと揺らしバランスをとっているかとおもえばてビニール袋を手首にもかけている。


 どうやら彼女がおかしてというのは性行為の意味で” おかして” ではなく、荷物を置かして欲しいと言うことであった。

 


 


 


 

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