皆さんに質問ですが、皆さんは自分の小説の中に、作中作として他人の小説を書けますか?
私は書けません。
私が書いている作品は、私の内発的なもので、私が書いたものは「私が書いたもの」の範疇を越えられません。
せいぜい短い手紙とかくらいでしょうか、書けるのは。
ところが、この作品では、文芸サークルのメンバーがそれぞれの小説を持ち合い、品評しあいます。
決してあらすじや抜粋ではなく、それぞれが書いた小説が提示されている。もちろん掌編ではありますが。
そして、それに対して批評し合うのですが、当然、同じものを読んでも感じることは千差万別です。意見が異なることもあり、討論が繰り広げられる。
これってすごいことだと思うんです。
それぞれの文体で小説を書く、それぞれの小説に対するそれぞれの受け止め方を表現する。
それは、登場する人たちの考え方を表面的にではなく、深いところまで理解しなくてはいけない。それぞれの人達の考えの背景となった様々な事情も含め、きちんと設定し、具体のキャラに落とし込んでいかなくては出来ない。
タイトルで「読む方にもエネルギーを求める」と書きましたが、この作品がもっともエネルギーを求めているのは間違いなく作者です。
この作品、使い捨ての娯楽として消費されていく最近のネット小説とは趣が異なり、必ずしも万人受けはしないかもしれない。
でも、読んでいただければ、この作品に込められた熱量に驚くことと思います。
ぜひ皆さんに読んでいただきたい作品です。