金属バットに愛を込めて
藤泉都理
金属バットに愛を込めて
「じいちゃ~~~ん!!!」
二十代男性の
すれば、ノートバソコンが起動、真っ黒だったノートパソコンの画面に太吉の祖父である
「またか。太吉」
「まただよ~~~」
吉蔵は太吉が持っている金属バットに視線を向けた。
ぐにゃんぐにゃんにあちらこちらひん曲がっている痛々しい姿の金属バットを見るのはこれで何度目だろうか。
太吉が今年の元日に付き合っている恋人、
『ねえ。吉蔵おじいさん。太吉には内緒よ。私ね。悩んでいるの。私の球を一度も取りこぼす事なく受け取ってくれるキャッチャーの
以前吉蔵を映すパソコンがある部屋に来た時に、栞は吉蔵にそう言ったのだ。
二股するなど、けしからん女子だ。
などと、吉蔵は一切合切思わなかった。
栞の真摯な瞳を受けて、吉蔵は太吉も栞も優三も応援しようと決めたのだ。
「泣き止め。太吉。わしが金属バットを修復、進化させるからな。待っていろ」
「うん。じいちゃん。お願いします!」
袖で涙と鼻水を拭った太吉は吉蔵が映るパソコンに向かって、金属バットを差し出した。
すれば、パソコンが上下左右に大きく揺れ動いたかと思えば、瞬く間にロボットへと変身したのである。
「うむ。待っていろ。太吉。じいちゃんが心血注いで金属バットを鍛えるからな」
「うん。じいちゃん。俺は俺を鍛えて来るよ!」
「ああ。五時間後にまた来い」
「うん!」
元気よく部屋から出て行った太吉を目を細めて見つめていた吉蔵。やおら指パッチンをしては机とパソコンしかなく殺風景だった部屋も変身させてのち、椅子に座って道具を手に取り、金属バットを鍛え始めたのであった。
「はあ。しかし。まだまだわしは眠れそうにないなあ」
(2025.4.1)
金属バットに愛を込めて 藤泉都理 @fujitori
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