8月32日

@Kagenashi-Rei

8月32日 起

私は生きている。

だからこそ、この文を綴る。

後に巻き込まれた者のために


 私が小学生の時、家族で祖父母の家に遊びに行くことになった。

そこは「田舎」というには相応しい場所で、近くにはどこまでも続くかのように思わせるほどに大きな樹海が広がっている。

それは子供の頃の私からしてもいきたいと思わせる魅力があった。

「確かに最近死者も出ているらしいが物騒と言うほどでもないだろう、なにしろ樹海での遭難者だったんだから。」「出発は朝がいい、朝に出発してもおそらく暗くなる。それだけ遠いんだ。早くした方がいい。」と父親が母親を諭しているのをきいた。…はずだ。なにしろ私はこの後に喜んだのだから。

そして出発の日、私はそんな田舎に着いてからのことを考えながら家を後にした。

そんな田舎だったからか父親の言う通り、朝に出発したにもかかわらず祖父母の家に着いた時、辺りは暗くなっていた。


 これから綴るのは、思い出したくもない不確かな記憶だ。

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