オナキンカンフー 玉の章
あきかん
チンチンは拳銃に似ている
チンチンは拳銃に似ている。
何よりもその形だ。太く、大きく、硬い銃身はチンチンの理想形と言える。特に44マグナム拳銃がそうだ。熱く巨大なマグナム弾を発射することこそ、男の生き様そのものなのだ。
そして、チンチンはリボルバーでなければならない。お前のチンチンは連射ができるか?できたとしても、せいぜい両手で数えられる程度だろう。つまり、リボルバーの弾数と同じということだ。
最後に、チンチンもリボルバーも装填に時間がかかる。回転式弾倉に一気に全弾を装填できる道具もあるが、それでも遅い。いや、遅い方がいい。パーカッション式が理想だ。火薬と弾丸をシリンダーに詰める感覚は、精巣に精子が溜まっていく感覚に似ている。そして、それを射出する快感は、チンチンもリボルバーも同じなのだ。
ここまでの話は、師父と私を結びつけるためのものだ。
一撃必殺。それを信条とする師父は、自身の拳を銃弾に例えた。「私の拳はマグナム弾だ」と。急所など関係ない。体のどの部位に当たっても、それが致命傷になる。そう自慢げに語る師父は、さらに得意げに技を披露した。崩拳。中段突きだ。固い地面に足跡を残すほどの震脚。そして、パン!と空気を叩く拳の音が周囲に響き渡った。
「お前もやってみろ」
師父が顎で促した。私は師父の見よう見まねで崩拳を空へ放った。震脚すらまともにできない当時の私にとって、空気を叩くことなど夢のまた夢だった。
「全然ダメだな~」
と、面白そうに笑う師父は、続けてこう言った。
「今日も站椿だ」
「えぇ、もう嫌だよ」
当時の私はそう答えたが、
「いいからやれよ。修行と言えば站椿だ」
「それ、昨日見た映画の話でしょ」
と口答えしながらも、私は站椿の構えをとった。
背筋を伸ばして立つ。両足を肩幅に広げ、膝を少し曲げる。体の正面で大きなボールを抱えるイメージで、胸の高さあたりで両腕を柔らかく曲げる。
「せめてコツを教えてよ。何かないの?」
と私が聞くと、
「まずは体作りだよ。だから站椿をやらせている。『100の鍛錬より1の站椿』って有名な言葉もあるくらいだ」
そう言って、師父は改めて崩拳を披露した。
「拳は突き出すんじゃない。自然と前に出てくる。あえて言うなら、絞り出すんだ」
師父は真剣な顔でそう言った。当時の私には理解できなかったが、ある日、精通を迎えた日にその言葉の意味が分かった。いや、体感したのだ。推進力のない白く濁った液体がチンチンから勢いよく射出される瞬間を。そして、それを実行したチンチンの脈動を、私は余すことなく感じ取った。
その感覚を忘れないうちに崩拳を行った。チンチンから精子を絞り出す感覚。脚を踏み、拳を絞り出す。パン!と空気を叩く音がした。
できた!と興奮して舞い上がった。チンチンは拳銃だったのだ。そして、絞り出された拳は銃弾となる。チンチンがむき出しのまま、拳を開いては握った。
思い返せば、昨年亡くなった師父から教わったのは崩拳と站椿だけだった。今でもこの二つを毎日繰り返している。
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