人が必死に親を否定し離れようとする姿は難しく少し悲しく感じます。
おそらく私もその1人なのですが、親は重力みたいなものでいくら離れたい存在でもそこからしか出発できないんですよね。
結局はロケットを打ち上げるみたいに、重力の大きさを計り、それに対してどれくらいの力で抗えば脱出できるかを研究するしかありません。心の中にNASAを作って莫大な予算と時間をかけて嫌いな人の研究をするしかないんです。他の好きなもの、好きなこと、好きな人に費やすべき人生を彼等の研究に浪費してしまいます。でもひょっとするとそれも親子の愛情の1つの形なのかと最近感じてます。
この物語はそういう形の愛情がしっかりと書かれています。そしていくら嫌な場所でもそこから飛び出せば真っ暗で何もない宇宙です。孤独の中をまた別の惑星にたどり着こうとする姿、その軌跡から感じる確かな元いた場所の影響…人生哲学的な冒険譚のように感じました。
この未知への冒険がいかなる結末を迎えるかまでは書かれていませんが、おそらく季節が巡るように確かに進んでいくのだと思います。ぜひ自身について悩んでる方はお読みください。
おすすめです。
春が「嫌いだった」主人公が、自分自身と静かに向き合い、やさしいまなざしに救われていく。その過程がとても丁寧に描かれていて、読んでいるうちに自然と胸にじんわりとあたたかさが広がりました。語り口は飾り気がなく素直なのに、感情の揺れや陰影がしっかりと伝わってきて、思春期特有の痛みと、芽生えはじめた恋のあたたかさが、絶妙なバランスで心に残ります。かつて「ちくちく」と感じていた春服さえも、やがて優しい記憶に変わっていくようで——その変化に、そっと寄り添いたくなる作品です。
読後は、静かな優しさとくすりと笑える愛しさに包まれて、春という季節をもう一度、大切に見つめたくなりました。