第94話
まだ誇れるような何かを見付けられたわけじゃない。
自分自身の魅力がわからないのに、女の人に不自由しなさそうなタツ兄さんに告白されている現状に頭が追い付かないというのが、正直な気持ちだった。
「……タツ兄さん、私」
だからありのままを口にした。
タツ兄さんの魅力ならわかる。けれど、私の何がいいのかが解らない。
ただ静かに耳を傾けてくれていたタツ兄さんは、暫くしてからこんな言葉で返してくれた。
「そんなこと言ったら、俺なんかお前よりずっと年くってるし。オッサンにしか見えないんじゃないかと思って、ずっと恐かったんだよ」
タツ兄さんの吸いかけの煙草の残りが、灰皿の中で紫煙を立ち上らせていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます