第72話

「っ、騙してたの……?」






ハルコちゃん、と。


小さく呟かれた言葉を最後に、さくらさんは走り去って行ってしまった。



男たちは、俺が男だと判った瞬間さくらさんとは逆の方向に消えていった。








* * *










あれから二週間の時が経った。


ひなたはさくらさんと俺の間に何かあったんだと悟りながらも、俺の酷い落ち込みように中々言葉をかけられずにいたらしい。






「……景気づけにライブでも行く?」






核心には触れずとも、遠回しに元気付けようとしてくれているのは解る。






「ん。さんきゅ」






自分では普段通りに笑えていると思っていた。


しかしながら、眉尻を下げてしまうひなたを見るにつけ痛々しく映っているのかなぁなんて思ったり。

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