第70話

「ひなたと仲良くしてくれて、ありがとうね」






目元を細めて、穏やかに笑う彼女。


こんな風に近付きでもしなければ、きっと知り得なかっただろう。


俺が"男"として接していたなら、こんなに穏やかな顔で見つめてはくれなかっただろう――…。






「さくらさん」






意を決してルージュに縁取られた唇を開く。


言わば今の俺は仮の姿だ。"陽斗"じゃなく、"ハルコ"なんだ。






「実は、」







真実を告げようとさくらさんの澄んだ瞳を見つめ、言葉を落としかけたその時だった。

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