第10話

温泉で温まり、お腹も満たされた三人は、ふかふかの座布団の上で一息ついていた。


「ふぅ~、おいしかったぁ。」


今里裏すは、は満足げに伸びをすると、ぽふんと座敷に横になった。


「ねむ……ちょっとだけ……」


そして、そのままごろごろと転がり、あっという間に目を閉じてしまった。


「えっ、もう寝ちゃうの?」


「はやっ! さすがお子ちゃま。」


早百と合亜は顔を見合わせ、くすくすと笑う。


今里裏すは、は普段から元気いっぱいだが、食後にすぐ眠くなるのはまるで小さな子供のようだった。


「はぁ……食事のあとすぐに寝るなんて……」


「まるで、子供みたいね。」


二人が微笑ましく今里裏すはの寝顔を眺めていた、その時だった。


寝言が呼ぶ、甘い罠


「……スキスキ・スキル・パワーアップ……んん……バージョン……2.1」


今里裏すは、が突然寝言をつぶやいた。


「?」


「え、ちょっと待って、それって……!」


二人は顔を見合わせた。


これは以前、今里裏すは、が自分に間違えてかけてしまった魔法――*「スキスキ・スキル・2・パワーアップバージョン」の呪文ではないか?


「……やめ……それ、ダメなやつ……!」


止める間もなく、魔法の言葉は最後まで呟かれた。



その瞬間、二人の心に突き抜けるような感覚が走った。


「え、これ、やばい……」


「また……かかった……?」


そう、彼女たちは「スキスキ魔法」にまた、かかってしまったのだ。


今里裏すは、の寝顔を見つめるうちに、胸の奥からふわっと甘い感情がこみ上げてくる。


眠る今里裏すは、の小さな鼻、すやすやと上下する肩、無邪気に開いた唇。


「か、かわ……」


「ちょっと、これは……まずい……」


顔が熱くなる。心臓が高鳴る。


「ね、ねぇ……このまま放置……する?」


「放置っていうか……これ、どうするの……?」


二人は困惑しながらも、今里裏すは、を見つめ続けた。


放置したらしたで、今里裏すは、が無防備すぎる。


しかし、この魔法が解けるまで、今里裏すは、のことが好きで好きでたまらない状態になっているのも事実だった。


「……あーもう、ほんと、寝言で魔法かけるとか……」


「これ、どうやったら解けるの?」


悶々とする二人


早百と合亜は、ぽふんと座布団に沈み込み、ため息をついた。


今里裏すは、の寝顔を見ていると、愛しさが止まらない。


「なんか……もう、ほんと、すはちゃん、ずるい……」


「こうやって、無邪気に寝ちゃうところとか……」


悶々としながらも、二人は眠る今里裏すは、を優しく見守るのだった。

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