第2話 調味料の可能性

 一人暮らしの独身男の給料日前の食卓は、調味料の可能性に宇宙を感じられる。


 近所で一番安いスパゲッティの麺を唯一の調理器具である26センチのフライパンに放り込み、うどん並みに柔らかくなっな麺に、塩、コショウ、麺つゆを目と手の感覚だけで回し入れ、ほんのりと茶色くなった麺を、もとの色白に限りなく戻れとばかりにマヨネーズをぶち込み、かき混ぜる。


 皿にもったそれに、七味唐辛子を大リーグピッチャーの心境で投入すれば、世にも甘美な逸品の出来上がりだ。


 この逸品を堪能したあと、ストックしておいたパックごはんをレンチンしてごま油で炒め、塩、コショウして、うま味調味料と醤油。


 ビーガン、ベジタリアン、食育を論じる崇高な主張を嘲笑するかのごとく、部屋中に広がる香りの刺激に酔いしれながらこれをタッパに入れ、冷凍室に入れる。


 朝になったら少し短めにレンチンして、ランチにちょうど食べ頃になるようにして、会社に持っていこうと思う。

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