第6話 朝焼けの駅ホーム
夜が明ける直前の駅ホーム。薄紅色の朝焼けが空を染め、冷たい風が吹き抜けていく。通勤電車を待つ人々の中に、一人だけ佇む女性がいた。スーツ姿で髪を束ねた理沙は、少し疲れた表情でホームの端に立っている。
「おはよう、今日も早いんだね」声をかけたのは、駅員の大輔。清潔感のある制服と、優しげな笑顔が印象的だ。「おはようございます、大輔さん。今日は出張なんです」「そっか。大事な仕事?」「ええ、プレゼンがあるんです。でも、あまり自信がなくて…」理沙は少しうつむき、冷たいホームのタイルを見つめた。
「理沙さん、知ってる?朝焼けを見ると、希望が湧くって言うんだ」「希望、ですか?」「うん。夜を乗り越えた証だからね。だから、きっと理沙さんも大丈夫さ」大輔の言葉はどこか温かく、自然と顔がほころぶ。「ありがとう…少し元気が出ました」「俺がここにいる理由は、みんなの朝を支えるためだからさ。少しでも笑顔になってくれたら、それでいいんだ」
電車が到着するアナウンスが流れ、人々が動き出す。「そろそろ乗らなきゃですね」「ああ。気をつけて行っておいで。また元気な顔を見せてよ」理沙は微笑んで軽くうなずき、電車に乗り込んだ。
発車ベルが鳴り、ゆっくりと電車が動き出す。窓越しに見えた大輔が、さりげなく手を振っていた。朝焼けの中で、その姿がどこか頼もしく映り、理沙の胸に小さな勇気が灯った。
「…よし、頑張ろう」理沙は胸を張り、朝日が差し込む車窓を見つめながら、そっとつぶやいた。
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