いとほし1

第1話



A4サイズのノート。それがアイツの全て。


普通のサイズから比べたら大きな、だけど世界から比べたらちっぽけなノートがアイの全てなのだ。


それをわたしは可哀相だとは思わない。だけどその世界を飛び出そうとしないのは、どうしてだろうと思う。


ユウタと自己紹介したら、大抵の人が男の子みたいだねって言う。佑歌、でユウタ。漢字だけ見てみれば女の子に見えなくもないこの名前を、アイはきっととても気に入ってくれていると思う。




「アイ、帰るよ」




返事が無いのはいつものことだけど、振り返ればニコニコと嬉しそうに笑うアイが目に入る。


A4サイズのノートをしっかりと抱えて、行こう、と口をぱくぱく動かした。




藍佑あいすけが喋れなくなって、2年が経つらしい。

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