第2話

19時を少し過ぎた頃─…




駅の近くにある外資系ホテルへと足を運ぶ。私の給料一ヶ月分くらいが一泊で吹っ飛んでしまうような宿泊代のそのホテル。




もちろん、支払いは私ではなくこの後ここで逢瀬を重ねる相手が支払ってくれる。



自分都合で私のことを呼び出しては…直前でドタキャンしてくるなんてことはざらにある。ので、会計くらい全てもってもらわないと割に合わない。




このホテルへはもう何度も足を運んでいるので…ホテルマンにも顔を覚えられている。フロントに向かえば何も言わずとも…「お待ちしておりました」っと声を掛けられ、そのまま部屋へと案内してもらえる。




この神がかった待遇は、何も私が凄い権力者だから…なんて言う理由ではなく。この後私と密会する相手の方に嫌われるのを避けるため、平凡な私にもこんなスペシャルな対応をしてくれる。





上昇していくエレベーターの中で、こっそりとため息をついた。何度来ても…慣れない。一人で部屋へと向かうこの時間は…果てしなく長いものに感じる。







きっと帰りは─…


もっと憂鬱な気分なんだろうな。

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