幕間
side藤
第6話
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夜中に電話が鳴った。
それも携帯じゃない、家電だ。
一人びくついて目を覚まし、次の瞬間、親しい誰かに何かあったのだろうかと考える。
「はい、もしも…」
「起きろーっ!!」
「うぉ!?」
「起きた!?起きたね!?今すぐそっち行く、寝ないで待ってろ!!」
「???」
寝入りばなを起こされたことに抗議するひまもない、ものすごい怒声だ。
IQが限界まで下がった頭をぶんぶん振って、無理やり脳みそを働かせる。
「ひ、ヒロ?」
「そうだよ!」
「何?こっち来るって、どうしたの?」
「チャマから電話があった」
「えっ」
「居場所も教えてくれた。俺たちと会う気になったんだよ」
「…本当か?」
「そのつもりがないなら電話してこないでしょ」
今度はかたい声だった。
チャマに会える?
にわかには信じられない。嘘じゃないのか?
カレンダーに目をやる。
あいつが俺たちの前から姿を消してから、もう2年もたつんだ。
「じゃ、とにかく行くね」
「ああ」
電話を切り、ヒロが来たらこの散らかった部屋をどう言い訳しようかと考える。
チャマがいなくなってからの俺は、食事も掃除も目に見えていい加減になっていた。
…あいつに知られたら怒られるな。
自然にそんなことを考える自分が、情けなくて、切なくて、でもどうしようもなく愛しかった。
長いようで短い月日。
チャマはどう過ごしていたんだろうか。
―――30分後。
ヒロが驚異的な速さで俺の家に現れた。
当然車で来たんだろう。
ついでに、あまり考えたくないようなスピードを出したんだろう。
「よく捕まらなかったな」
「こんな時間だよ?」
「夜中でも覆面パトっているらしいじゃん」
「仮にそうだとしても、切符の一枚や二枚、チャマと比べたら大した事じゃないし」
「…そうだな」
笑って頭をかいたら、ヒロもにこっと相好を崩した。
「会えるよ、チャマに」
「うん」
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