第25話

「うん?結は本当は喋れるんだろ?お前は汚くなんてない。俺が保証するからお前の声を聴かせてくれ。」



結の声を聴きたかった。



「わ……わた…し……。」



彼女は恐る恐る声を出した。綺麗な声だった。



「綺麗な声だ。結は綺麗だ。本当に。」



そういうと結は照れたように顔を伏せる。



「よく頑張ったな結。」



そういって俺が結を抱きしめると、俺の腕の中で結が泣き始めた。



今まで泣けなかったのだろう。彼女は静かに涙を流した。



「泣いてもいいが、俺の腕の中でだけな。約束だ。こんなに可愛い泣き顔をほかの奴らが見たら絶対お前に惚れるからな。」



そういうと彼女はさらに俺に抱き着いてくれた。素直に嬉しかった。



(これからお前を泣かせるものは何もない。俺が守る。)



心の中でそう誓いを新たにする。



そのうち、結は泣き止むとふと声を出した。



「あっ、服が…。」



俺のワイシャツが僅かに結の涙で湿っていた。



「謝るものじゃない。別にこれくらい気にしないし、結が俺の腕の中で泣いてくれるならな。」

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