第24話

「誰がそんなことを言った?」



続けざまに質問する。



”私のお父さん”



その答えに俺は怒りを感じた。



(仮にも父親が娘にそんなことを言ったのか?)



”私は汚いって言ってた。”



彼女は再び紙にそう書いた。



そんなことない。絶対に。お前は汚くないと伝えたかった。



「お前は汚くなんかない。その体で、たくさんの痛みや苦しみを背負い込んで、よく頑張ったって褒められるべきなんだ。わかるか?」




そうだ。お前は頑張った。昨日の夜、湊埼のじじぃに結の状態を聞いたところ、ほぼ間違いなく虐待を受けていただろうと話していた。



極度の栄養失調のせいで、体が十分に発育していないこと。新しいものから古いものまで、体中に無数の痣があったこと。全てが彼女が長い間暴力やネグレクトをうけてきた証拠だった。



(ちいさな体で、痛みも苦しみも、全部1人きりで背負い込んで、沢山我慢してきたんだろ?お前はよく頑張ったし、暴力をうける必要なんて何もないんだ。)



そう伝えたかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る