第15話
「撃たれた…?」
昨日の夜の記憶は曖昧にしかない。珍しく私が閉じ込められていた部屋の鍵が開いていて、逃げ出したものの、外は雪が降っていてひたすらに寒かったことだけはよく覚えている。
「覚えてないのか。まぁ、嫌な記憶はないほうがいい。無理に昨日のことを思い出す理由もないからな。」
「はい。」
左肩の包帯はそのせいなのか、と心の中で納得する。
「それと、敬語は無しだ。」
「えっ?」
「俺もお前のこと結って呼ぶから、お前も俺のことは名前で呼べ。」
「はい、…じゃなくて、うん。そ、奏。」
「いいな、名前で呼ばれるっていうのは。なぁ、結。」
また初めてだ。初めて誰かの名前を呼んだ。奏といると色んな初めてがある。
「忘れてたが、目が覚めたんだから医者を呼ばなきゃな。俺の主治医でここの院長でもあるじじぃだから心配するな。あ、じじぃっていっても腕は確かだ。」
そう微笑みながら話すと、彼はナースコールを押した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます