第15話

「撃たれた…?」



昨日の夜の記憶は曖昧にしかない。珍しく私が閉じ込められていた部屋の鍵が開いていて、逃げ出したものの、外は雪が降っていてひたすらに寒かったことだけはよく覚えている。



「覚えてないのか。まぁ、嫌な記憶はないほうがいい。無理に昨日のことを思い出す理由もないからな。」



「はい。」



左肩の包帯はそのせいなのか、と心の中で納得する。



「それと、敬語は無しだ。」



「えっ?」



「俺もお前のこと結って呼ぶから、お前も俺のことは名前で呼べ。」



「はい、…じゃなくて、うん。そ、奏。」



「いいな、名前で呼ばれるっていうのは。なぁ、結。」



また初めてだ。初めて誰かの名前を呼んだ。奏といると色んな初めてがある。



「忘れてたが、目が覚めたんだから医者を呼ばなきゃな。俺の主治医でここの院長でもあるじじぃだから心配するな。あ、じじぃっていっても腕は確かだ。」



そう微笑みながら話すと、彼はナースコールを押した。

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