獅子搏兎 ~向井葉月という枯れないエーデルワイス~

蛇部 竜(ダブリュー)

獅子搏兎 ~向井葉月という枯れないエーデルワイス~

 獅子搏兎ししはくと

 意味:どんなときでも手を抜かず、全力を尽くすこと。簡単なことでも全力で取り組むべきだという意味。


 そんな言葉を体現したようなアイドルがいた。

 2024年12月31日をもって、そのアイドルはアイドルを卒業し、芸能界も引退した。


 彼女の名は『向井葉月むかいはづき』。

 アイドルグループ『乃木坂のぎさか46』の3期生、その期の12人のうちの一人だった。


 私が彼女を知ったのは乃木坂46の冠番組で芸人コンビ『バナナマン』がMCを務める『乃木坂工事中』で3期生が初めて登場した回だった。


 2017年に1期生である『生田絵梨花いくたえりか』さんがフィンランド民謡『イエヴァン・ポルッカ』を空で歌っている光景を見た時から、生田さん及び、乃木坂のファンになった私にとって、3期生の12人は初めて自分が情報0の状態で見るメンバーだった。


 私の主観ではあるが、乃木坂3期生の12人は乃木坂1期生を除けば、他の坂道グループの期を含めても、個性やビジュアルもトップクラスにレベルが高い、奇跡の12人だと今でも思う。


 特に山下美月やましたみづきさんと梅澤美波うめざわみなみさんは初めて見た時からもう既にエースとなる器が十分に垣間見えていた。


 3期生が初めて『乃木坂工事中』に登場した回は先輩である1・2期生がそれぞれ担当になった子を紹介するという流れになっていた。


 そんな中、向井葉月さんは齋藤飛鳥さいとうあすかさんに紹介されるという流れになった。


 彼女の特技はけん玉とギターで、ギターを演奏する際はバナナマンの二人がこれを弾いてみてほしいというリクエストを何回しても、齋藤飛鳥さんが毎回『サザンオールスターズ』の『真夏の果実』を弾かせるという悪乗り天丼が出来上がっていた。


 これが私が初めて向井さんを知った知った時だった。

 正直、この時点ではあまり向井さんに注目していなかった。

 この時はどちらかというと、山下美月さんの方を注目していた。

 

 私が初めて向井さんに注目したのは同じく乃木坂工事中の番組内でバブルボール相撲をした回があった時だ。


 バブルボール相撲というのは、対戦相手と自分がバブルボールという弾力のある大きな円形のボールの中に入り、相撲と同じで、相手をコートから押し出したり倒したりして戦うゲームだ。


 この時、向井さんはとんでもない爆発力をみせた。

 先輩である西野七瀬にしのななせさんや衛藤美彩えとうみささん、高山一実たかやまかずみさんを打ち破り優勝したのだ。

 先輩だからといって遠慮せず全力でぶつかる姿はすさまじかった。


 だが同時にこのはとにかく何事も全力でとりこむ娘なんだと、とても好感をもった。


 後に3期生同士が4人同時にバブル相撲をして、負けた人は以前紹介してくれた先輩(向井さんの場合は上記にも書いた斎藤さん)に顔面パイされるというゲームで、前回の事で警戒されたのか、一番先に狙われ脱落した時は、悔し涙で号泣しており、負けず嫌いの片鱗も見せていた。


 このバブル相撲の件を見て以来、乃木坂の中では生田さんに次いで私の中で新たな推しとなった。


 向井さんは生田さんほどではないが、けっこう天然でリアクションや動きもなかなか変わっていて、表情も豊かだった。 

 そこが惹かれた理由でもあるかもしれない。


 また向井さんは、テレビ越しでも垣間見える優しさも印象的だった。

 元々、乃木坂が好きで入ってきたこともあってか、グループへの愛は一番、大きかったかもしれない。

 贔屓目ではあるが、先輩には可愛がられ、同期や後輩には慕われている印象が特にあったと思う。

 

 常に全力全開で周りへの愛が深かった向井さん。

 彼女は本当に乃木坂の塊のような人だったと思う。


 ―――獅子搏兎。


 この言葉を知った時、野球好きで『西部ライオンズ』のファンである彼女にピッタリの言葉だと思った。


 もう活躍を見ることは出来ないが、あの全力全開の姿を私はいつまでも忘れない。

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