第3話

つくづく癇に障る男だ。




「まあでも」




ナンパに成功し手を繋いで歩き始めた2人の後ろ姿を眺めていると、顔を覗きこむようにマサトラの顔が視界一面に現れる。




「お前だったら声かけずにはいられねえだろうけど」




双眸の真正面で婉美に微笑む。


絹糸のような艶やかな銀色の髪が白い頬を滑り落ちる。




「あんたみたいなのまじ勘弁だわ」


「そこは顔赤らめて動揺するところだろ。真顔ってお前」


「そんな反応できるわけないでしょ。求めないでくれない」


「はいはい。求めちゃいねえよ。そういうところがいいと思ってんだから」




クスクスと愉しげに笑いマサトラは目の前にあった顔を退かした。見透かされてるみたいでこっちは不愉快なんだけど。



マフラーを上に引っ張り不満色に染まった顔を隠した。



再び歩き始めると、「そういえばさ」マサトラが話しかけてきた。



視線だけを寄こす。




「お前、手袋しねえの?」




マサトラの視線は私の手へと向けられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る