第2話

「だから何で一緒に歩いてるのよ」


「しょうがねえだろ。どうせ行く方向一緒なんだから」




結局Ragnatelaまで一緒に行く羽目になった。畜生。



不満を口にも顔にも出す私とは対照的にマサトラの表情は通常運転。機嫌がいいのかも読み取れない。気だるげにその忌々しく長い脚を前に進める。



モスグリーンのマフラーにわずかに顔を埋める横顔を見て、不本意ながらも隣を無言で歩く。




なにげに私服初めて見たな。どうでもいいことを頭の中では考えていた。




「ねえねえ、君今暇?」




街中を歩いていれば、見た目はそうでもないのに口調がチャラい男が女の子をナンパしていて。



へらへらとだらしなく頬を緩ませる男に冷めた視線を向ける。締まらない顔だな。



女の子がまんざらでもなさそうだから別にいいけど。




「腑抜けた面してんな」




まり〇っこりみてえ。同じことを思ったらしいマサトラがナンパ男を見て呟く。明らかに馬鹿にしてるだろその声。人のこと言えないけどさ。




「ああいう男にやすやすと掴まんなよ」


「ご心配なく」


「うん。特に心配してねえ。お前の場合返り討ちにしそうだもんな」




じゃあなぜ言った。脳裏に浮かんだ疑問は特に返答にも興味がなかったから口には出さなかった。




「あんたもナンパする時は注意しなよ。下心丸出しのだらしない顔してたらあまりの気持ち悪さで逃げられるよ」


「生憎自分から声かけるほど女に困ったことないからな」




嫌味かよ。さらりと返した言葉に「あーそう」冷めた反応と視線を送る。

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