年賀状グランプリ

すーぴーぱんだ

年賀状グランプリ

 狭い自室で、スエット姿のままで一人、グループの寮宛てに元日に届いた数枚の年賀状を眺めていたら… めっちゃ驚いた。

 7コ上で「月と六ペンス」の三代目キャプテン・武神美波(たけじんみなみ)さんから届いていたのだ。

 私は出していなかった。昨年(毎年書くのが面倒だからと)「年賀状じまい」をしたので。

 実家からガメて来た、小型の旧式オーブントースターで焼いた磯辺焼きを食べながら、慌てて目を通す。

<2025! HAPPY NEW YEAR!!>

 …ベタな書き出しである。無論、本人には到底言えない。

<最新シングル「クラクション」でもフォーメーションが隣で。去年は傍にいてくれて心強かったことが多くて…>

 はて、何かしたっけ?

 隙あらば夕食を奢ってもらおうと、美波さんの近くをうろついていただけなのだが。

<今年は隣にいることが増えるから、一緒にがんばれると嬉しいな。>

 実は新年早々、私、菅谷咲月(すげのやさつき)は、副キャプテンに就任することが発表されることになっている。

 先輩方を差し置いて… 一番下の5期生なのに。

 稀代の面倒がり屋で、弱冠19歳の私が副キャプテンだなんて、不安でしかない。

 美波さん曰く、5期生ライブの座長を私が務めているのを見て、決められたそうだが…

<副キャプテンの難しさは、私しか分かってあげられないから…>

 前・副キャプテンの美波さんがキャプテンということは― 私が近い将来、次期キャプテンになるということ …なのかも。

<引き受けてくれて、ありがとう。>

 まあ「副キャプテン手当」あるし… あっ、何かとメンバーに奢んなきゃいけないのか。

<大丈夫。今までだって何とかならなかったことはないんだから>

 …いつかグループ30名を率いる時に備えて、今年は美波さんの傍でキャプテン学習に励むとしよう。

<色んなことを二人で乗り越えて、楽しい一年にしようね! …良いお年を>

 …良いお年をって、年賀状なのに?

 キャプテンになるには、この位のお茶目さが必要なのかも。

 ―さて、近くのローソンへ年賀状を買いに行くかな。

 磯辺焼きをくわえたまま紺色の半纏を羽織ると、私はサンダルを履いて玄関のドアを開けたのだった。

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