世界の料理ショー

「ママ！　何でピーマン切らせてくれへんの？」

　日曜の朝７時。ＳＨＯＷＲＯＯＭ配信用にケータイをセットした家のオープンキッチンでー

　昨夜の肉じゃがを温め直しながら、私が文句を言うと…

「あんたは高１にもなって、ピーマンのわたも種も一緒に切ってまうやないの！」

　慣れた手付きでわたと種を取っていたママが、澄ました声で言う。

　先日、毎週木曜深夜に日本テレビで放送中の、私が所属するアイドル・グループ「若草物語」の冠番組で＜お料理選抜＞企画が発表された。

　ＳＨＯＷＲＯＯＭ配信で各自が料理の腕を振るい、ファン投票で選抜された上位２０名が、来年発売のシングル曲に参加できるというものだ。

「小羊のモツ、６個あるから。切っといてや」

　勝負メニューは「小羊モツシチュー」。Youtubeで見付けた『世界の料理ショー』という昔のエンタメ系料理番組で紹介されとって。何だかとても美味しそうやったのだ。

　ママは普通の主婦やけど… 実家が中目黒でジンギスカン鍋のお店をやってるんで。作れるんちゃうかなと。

　だが、ライバルは強敵揃いだ。料理下手で純ジャパ（ニーズ）の私と違い、大学で料理を専門に勉強している帰国子女の子とか。調理師免許を持っているハーフの人もいる。

　ママは、溶かしバターを入れたフライパンに、角切りにしたピーマンと小口切りした分葱（わけぎ）、それにスライスしたマッシュルームを加えると、塩・コショウして強火で炒め始めた。

「もう！　私が作ってる風に見えんとアカンのに！」

「口動かしてる暇あったら、朝食でも作りや」

　私はトーストに薄切りのバターを載せると、オーブントースターに入れた。

　これは会社員のパパ直伝のホットサンドだ。焼き立ての食パンに温めた肉じゃがを挟み、包丁で切るだけ。独身の頃よく食べていたそうだ。

「お早よ。早起きすると、腹減るな」

　のそっと現れたパパは、私が作った肉じゃがのホットサンドを見付けると、速攻で食べ始めた。

「旨っ！ 流石はオレやわ」

　娘を褒めんかい！ と心の中でツッコミながら思った。家族仲はアピール出来たんちゃうの？

私の料理の腕は伝わらんかったかもやけど。