第41話

「龍成、愛してるよ」


「…ん」


「龍成は?」


「ん?……好きだよ」


「ナコのこと、愛してないの?」


「好きだって」


「チャラいくせに、意外とノリで言えないんだね」


「……『愛』とか聞くと、一気にシラけんだよな」


「─ごめん!好き!大好きだよ!」


「…俺も」





──いつの間にか、真正面から言葉を受け取ることから逃げていた。



始まりは親父への反発心、劣等感、過去の自分への後悔。



傷つくのが怖かった。だから、自分が傷つく前に切り捨てる。自分の弱さを認めたくなかった。



それまでの自分を、かっこばかりつけていた上辺だけの自分を、近い将来易々と崩されることになるとは、夢にも思わなかった。



悪夢が幸せへ続く入口になることを、遠い過去の自分へ伝えられたのなら、もっと人に優しくできたのかもしれない。



そう思えるようになるのは、本当に大切な人に出逢えてから。それまで、もう少し。





「龍成、あなたの結婚が決まったわよ」


「俺が結婚?するわけないだろ」





─[完]─

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離婚前提策略婚。─龍成編─ 櫻井みい @sakuraimii

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