第21話

強く手を引く母さんの顔を見ると、無表情だと思っていたけど、閉じた唇が震えている気がした。





「母さん!」


「……なあに?」


「お腹空いた!」


「…そうね。どこかで食べてから帰りましょうか」


「母さんが作ったご飯がいい!」


「料理は苦手なの、知っているでしょう?今日はシェフにお願い…」


「母さんが作ったご飯がいい!!」


「………ありがとう、龍成」





─あのおばさんに、「母さんを悪く言うな」って、大声で言ってやりたかった。



なんだよ、母親になれないって。母さんは俺の母さんだよ。母親だよ。何言ってんだよ。



母さんは、俺の母さんは─…。




口に出して言えなかったのは、少しだけ、ほんの少しだけ、俺を産んだあの人がかわいそうな気がしたから。



最後の顔が頭に思い浮かんで、あの写真を前に、母さんを守ることができなかった。

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