第15話

笑ったその顔が、俺の脳裏に焼き付く。



無性に泣きたい衝動に駆られる。



それは恐怖とか悲しみとか、負の感情からではなくて。



言葉では言い表せない気持ちが、胸の中を埋め尽くす。





「……もしかして、俺を産んだのはあんたなの?」


「──。……そうだよ。わたしが産んだの。あんたのお母さんにせがまれてね。あの女はすごいわ。わたしじゃ到底できないもの。こっちが尻込みしちゃったくらいよ」


「なんで?なんで母さんがあんたに頼んだの?あんたは誰なの?」


「……わたしは、あんたのお父さんと結婚するはずだったの。でもわたしの家はお金持ちでもなんでもないからできなかった」


「なんで?なんでお金持ちじゃないと結婚できないの?」


「龍成にはまだ難しいね。もっと大きくなってからたくさん話したかったけど、ごめんね。時間がないから、難しいけど聞いてちょうだい」





そう言って、その人は自分のことを話し始めた。



噛み締めるように、慈しむように、時折何かに思いを馳せながら。

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