第15話
笑ったその顔が、俺の脳裏に焼き付く。
無性に泣きたい衝動に駆られる。
それは恐怖とか悲しみとか、負の感情からではなくて。
言葉では言い表せない気持ちが、胸の中を埋め尽くす。
「……もしかして、俺を産んだのはあんたなの?」
「──。……そうだよ。わたしが産んだの。あんたのお母さんにせがまれてね。あの女はすごいわ。わたしじゃ到底できないもの。こっちが尻込みしちゃったくらいよ」
「なんで?なんで母さんがあんたに頼んだの?あんたは誰なの?」
「……わたしは、あんたのお父さんと結婚するはずだったの。でもわたしの家はお金持ちでもなんでもないからできなかった」
「なんで?なんでお金持ちじゃないと結婚できないの?」
「龍成にはまだ難しいね。もっと大きくなってからたくさん話したかったけど、ごめんね。時間がないから、難しいけど聞いてちょうだい」
そう言って、その人は自分のことを話し始めた。
噛み締めるように、慈しむように、時折何かに思いを馳せながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます