第14話

「わたしもこんなことしたくなかった。でもこうでもしないと、会えないまま死ぬことになりそうで…」


「……」


「すぐにお迎えが来るから安心してね。それまで少しお話しましょう」


「……」





数秒見つめ合い、俺は小さく頷いた。それを見て、力無く微笑む。



その人は俺の口に貼り付けてあるテープをゆっくり外すと、嘲るような表情をした。





「ムカつくほど神田にそっくり。わたしのお腹にいたのに、一つも似てないなんて」


「……」


「ねぇ龍成。お父さんとお母さんのこと、好き?」


「……誰なの?俺のこと、知ってるの?」


「もちろん知ってる。『龍成』って名前、わたしが付けたんだから。本当は流れ星で『りゅうせい』にしたかったんだけどね」


「……それは嫌だな」


「あはは。そっか。じゃあ『龍成』にして良かったわ」

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