エイプリルフール
第1話
「俺、今年、リーグで首位打者になるから」
俺の一言に、周りにいた全員が静まり返った。それもそのはず、俺は、サークルに入って二年間で打ったヒットはわずかに一本、誰が考えても首位打者になれるはずないのである。
「あはは、皆静まり返ってどうしたん? 今日は四月一日でエイプリルフールやん。嘘ついたってええやろ」
「なんや良太、嘘やったんか。ほんま、びっくりしたで」
「お前が首位打者なんて取れるわけないもんな」
メンバーの多くは、大笑いしていたのだが。
「なんや、嘘なん?川越君が、ほんまに首位打者取ったら、私、付き合ってもええかなって思ってたのに」
マネージャーの菜月ちゃんの一言で、再び静寂が訪れた。菜月ちゃんは、スタイル抜群で、顔も可愛らしい上に、性格もよくサークル全員の憧れだったからだ。
しかも、俺は、一度菜月ちゃんに告白していて、見事に振られている。
「まさか、菜月ちゃんもエイプリルフールやから、嘘ついてるっていうオチなん?」
「さあ、それはどうかな。嘘ついてるかどうか知りたかったら、首位打者取ってみたら」
菜月ちゃんは、肯定も、否定もせずに、いたずらっ子のように無邪気な笑みを浮かべた。
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