第33話

うわっ、俺ってすげーバカじゃね!?



(自分だったらいいのに…)とか思った事はあるけど、それを本人の前で言っちまったよ!!



え、俺ってば、どんだけ自惚れ屋!?



相澤、絶対引いてるし…っ



頭をかいてる手に、また新たに吹き出た冷や汗が染み込んでいる。



自分が言った言葉にすげー恥ずかしくなって、穴があったら潜りたいって心底思った。




…でも相澤も、『違うよー!』とか何とか、言ってくれても良かったのに。



……まぁ、それはそれで傷つくけどね。




…とりあえず顔を上げて、『冗談だよ!』とか言ってごまかして、なんとか話題を変えねば…っ。



俺は意を決して、俯いていた顔をバッと上げた。



「わりぃ相澤変な事言っちまって!冗談だから気にしな――…」




頭を上げて作り笑いをしたのに、『気にしないでくれ』と、最後まで言えなかった。



頬をまた赤く染めて、瞳をまた潤ませて、いつのまにか相澤が、俺をじっと見つめていた。



「あい、ざわ……?」



ポツリと呟くと、彼女はまたもや視線を下に逸らし、スカートの裾をキュッと握り締める。




――その姿を見て、



゙願望゙が゙希望゙へと



゙疑問゙が゙確信゙へと




――姿を変えていった。




「……気付いて、くれた?」




聞き間違えなんかじゃない相澤の声が



藍色が染み込んだ教室に、ポツリと零れた――…。

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