第32話

「――…俺がいる」




満面の笑顔で笑っている、俺の姿があった。



「これっ、て…――」



写真を凝視しながらポツリと呟くが、相澤からの返事は返ってこない。



幹の横に写ってるのは、小さいけど、正面を向いている笑顔の俺一人だけ。



いや、あん時は俺の目の前にダチがいたり桜の木があったりしたけど、それらは正面にある、相澤の横にある桜の木に上手く隠れてしまっていた。



つまりは、この写真からしたら、俺らがいた桜の木と相澤が横に立った桜の木は、ほぼ直線上にあったという事だ。




……しかし、よくまぁ上手い具合に、俺だけが隠れずに写ったもんだ。



一人感心しながら顔を上げると、なぜか相澤は、また俯いてしまっていた。



「あ、相澤!相澤の言うとおりよく見てみたらさ、なんか偶然、俺も写ってた!」



「…………うん」



「もしかして相澤が見つめてたのって俺だったりして!ははは~なんちゃって」



「………」




頭をかいて俯いて、照れた素振りをする。



自意識過剰なんかじゃなく、冗談のつもりだった。


笑い話のつもりだった。




…でも、相澤からの返事が返ってこなかったから、俺は“もしかして”と思った。




もしかして――……。








す、スベッたーーー!!!?

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