第十二章 迫る悪夢
――――第十二章 迫る悪夢
玲良が運命の人かもしれない……その考えが頭から離れず、恋美は夜も眠れない日々を過ごした。空くんと玲良が同じ高校に行く。もし、本当に二人が惹かれ合ってしまったら、自分の魔法は解けてしまう。そんな恐怖に駆られた恋美は、ますます空くんに依存するようになっていった。そして、焦るあまり、恋美はさらにまち針を空くんに刺す本数を増やしていった。デート中など、好きを見つけて、2本追加した。空くんの脚には左右合計5本もの針が刺さっている。説明書には「本数が増えれば増えるほど効果は増す」と書かれていたけれど、果たして本当にそうなのか、恋美にはもう分からなくなっていた。ただ、空くんを繋ぎ止めたいという一心だった。
しかし、5本目を刺したあたりから、空くんの様子がおかしくなり始めた。デート中に何度も脚をさすったり、顔をしかめたりすることが増えたのだ。「どうしたの?」と聞いても、「ちょっと疲れただけ」とはぐらかされるけれど、恋美にはそれがまち針のせいなのではないかと感じ、不安だった。それでも恋美は玲良に空くんを奪われてしまうことのほうが怖かった。
「もっと針を買ってこよう…」
そう思い立った恋美は、あの魔法のまち針を買った手芸用品店へ急いだ。しかし、店に着いてみると、シャッターが固く閉まっており、「閉店しました」という貼り紙が貼られていた。恋美は愕然とした。もう、あの針を手に入れることはできないの……?
あの時買ったまち針セットは6本。すべて使い果たしてしまった。ふと弥来のことを思い出した。弥来にはまだ1本針が刺さっている。彼から針を抜いて、空くんに刺せば……。罪悪感はあったけれど、空くんを失う恐怖の方が勝っていた。次の日、恋美は弥来に「ずっと伝えてなかったことを伝えたい、放課後、校舎裏に来て欲しい。」とDMを送った。
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