第95話
ああ、そうだった。私は自分の世界が歪んで、グラグラに揺れてしまいそうな時はいつだって見ないふりをして逃げてきた。
素敵で、ときめくことを一生懸命に探して、消えてしまいそうな光をどうにか守ろうとしてきた。
そうすることでしか、また笑顔を作れる自信がないからだ。
完成したシチューを三枚のお皿にうまく配分されるようによそいながら、そんなことを考えた。
これ以上迷惑をかけたらいけないって分かっているはずなのに、複雑な現実に追いつかなくなってしまった心で求めるのは、どうしてか幸坂先生の言葉だった。
――「何があったのかは知らねえけど、篠宮がそうやって暗い顔してると、なんとかしてやりたいって思うよ。」
あの人は私を嬉しくさせて、勘違いさせて、傷を残す天才だ。
私には、あんなに誰もが欲しがる人に愛しい目を向けてもらう価値なんてない。
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