第87話

「そろそろ帰るか。もう遅いし、送ってくから。」


こんなに面倒くさいことを言った私でも、幸坂先生は夜道は危ないからと送ってくれるらしい。


私はどんな気持ちで彼の隣を歩いていいか分からなかったから出来れば遠慮したかったけれど、そういうわけにもいかないみたいだ。



優しさって時には残酷だと思う。


私たちの間には気まずい空気が流れていたけれど、幸坂先生は私の歩幅に合わせて歩いてくれた。


学校の外をこうして幸坂先生と歩けるなんて不思議だなあと感じながらも、それが振られた直後なんて、すごく皮肉だと思った。



駅までの道のりを歩きながら見上げた夜空に浮かぶ月は、やっぱり泣きたくなるほどに綺麗だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る