第61話

うちの高校では、例年9月の二週目の土日に文化祭が開催されていて、私はその日になるといつにも増してウキウキしている。


普段は味気ない教室や廊下がだんだんとカラフルな装飾に彩られていって、土曜日の朝にはまるで違う場所みたいに生まれ変わっている光景は、三回目でも変わらずに私を感動させてくれた。


うちの生徒の家族らしい小さな子供連れの夫婦や、自分の高校生活を想像してキラキラと目を輝かせている中学生たちで溢れる人混みを抜けて、やっと私たちの仲間が待つ3年A組へたどり着いた。


「そういえば、すみれちゃん良い物持ってるじゃん。俺たちも早く行こ!」


「待って柿原。俺まだ作業終わってない。」


私と奈々ちゃんが教室に戻ると、ちょうど潤君が出てくるところだった。


シフトがバラバラで残念だねっていう話をしたけど、こればっかりはみんな平等にする必要があるから仕方ない。

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