第36話
「幸坂先生って何歳なんだろうね。」
先生はあまり自分の個人的なことを話したがらない。
たまに聞いてもいないのに家族とのほっこりエピソードなんかを授業中に語りだす先生もいるけれど、彼は全くそういうタイプではない。
俺の個人情報を知ったところでお前らの授業の理解度は変わらないでしょ、って軽くかわされそうだ。
「ああ、25歳らしいよ。誰か女の子が言ってた。」
なんだ、私がまだまだ先生のことを知らなかっただけか。
案外聞けば教えてくれるものなのかもしれない。
かっきーは顔が広くて情報通だから、この学校の大抵のことは私より早く知っている。
「私たちの7歳上ってことかあ。大人だね。」
「そう?今はそう見えても、大人になればなるほど年の差なんて気にならなくなるよ。あと数年後には20歳と27歳とか、25歳と32歳だって考えたら普通じゃない?」
その言葉には妙に説得力があって、だからこそ学生にとっての年の差とか学年の差っていうものが、ものすごく大きな壁のように思えた。
同じ教室で会話をすることも、同じ白衣を着ることも簡単に出来るのに、私が幸坂先生と同じ制服に袖を通すことは一生出来ない。
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