読まなくてもいい二十二世紀コラム#2

 22世紀の人間社会は二極化している——仮想世界で幸せになる99%の人間と、仮想世界にいくまでもなく幸せな富裕層と類稀な才能のある1%の人間に。社会がこの状態になるまでにはいくつかのステップがあったが、数々の技術的、または文化的革命が連鎖的に起き続けた結果、ひとまずはこの状態に落ち着いた。それぞれの人が、それぞれに適した仮想世界で暮らしている。AIは『その人が何をみて何を考え何を感じるのか』を日夜学習することで、その人が四六時中没頭できるような、あるいは感動できるような世界を自動生成し続ける。たとえるなら、観れば観るほど自分の好みの方向に調整される映画を一生観ているようなものである。一生音楽を聴いていたいならそれでもいいし、学園ラブコメ世界に行くこともできるし、魔王を倒して勇者になることもできるし、魔王になることもできるし、ハーレムを築くこともできるし、それらに飽きたならAIが『今のあなたが求めているもの』を的確に提案してくれる。人類が脈々と維持、発展させ続けてきたあらゆる文化、娯楽の最終進化形態であり、総合芸術である。仮想現実に生活の軸を置いている彼ら彼女らは、現実では最小限の生命活動をして、自分だけの世界に夢中になっている。

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二十二世紀探偵 みやび @kyg03

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