第8話 星空の誓い

美咲は物語を公開したことで、想像以上に大きな反響を受けていた。リスナーたちの感想が次々と届き、その中には心の底から感動したという声が溢れていた。彼女の物語は、誰かの心に触れ、さまざまな場所で波紋を広げ始めていた。


だが、心の中で美咲は次の一歩を踏み出さなければならないという焦りを感じていた。物語を書き続けることはできるが、次に進むためには何か大きな転機が必要だと感じていた。


「やっぱり、千佳には伝えたい」


美咲は再び千佳との連絡を試みる決意を固めていた。物語の中で、主人公は大切な人に伝えられなかった思いを告げる場面を描いていたが、それは自分のことでもあった。美咲は、千佳と心から向き合う必要があると感じていた。


夜、美咲は千佳にメッセージを送った。


「少しだけ話せる?」


数分後、千佳から返信が届く。


「もちろん、会えるよ」


数日後、二人は再びあの丘に集まった。星空の下で、言葉を交わすのは久しぶりだった。美咲の心は少し緊張していたが、千佳の優しい笑顔を見ると、自然とその緊張がほぐれていった。


「美咲、最近どう?」


「うん、元気だよ。あのね……」


美咲は少し躊躇いながらも、自分の中に抱えていた思いを話し始めた。物語のこと、陽介のポッドキャストがどれほど自分に力をくれたか、そしてその物語がどうしても千佳に届くように思えたのか。


「私は、あの頃からずっと……あなたのことを忘れていなかった」


「私も……」


二人の間にはしばらく沈黙が流れた。だが、その沈黙は心地よく、どこかお互いが一歩ずつ過去を乗り越えた証のように感じられた。


その日の夜、美咲は再びポッドキャストを聞きながら、自分の物語の続きについて考えていた。陽介が言った言葉が、また心に響いた。


「物語は、自分自身と向き合うための手段です。それがどうしても伝えたくて書くものだから、心のどこかにその力を信じているはずです」


美咲は確信していた。この物語が、自分の中の未解決の思いを解き放ち、同時に千佳と再び繋がる力になるのだと。


次の日、陽介の配信で、美咲の物語が再度紹介された。リスナーたちの反応が、さらに熱を帯びてきているのを感じると同時に、美咲はその反応に責任を感じていた。自分が書いた物語が、どれだけ多くの人に影響を与えているのか、その重さを実感し始めた。


「彼女の物語は、ただのフィクションではなく、彼女自身の心から生まれたものです。その中には、全ての人が共感できる普遍的な想いが込められていると思います」


陽介の言葉に、美咲は心から感謝していた。これまで自分が恐れていたことが、少しずつ意味を持ち、物語の力を感じる瞬間が増えてきた。


美咲はその日、物語を改めて見返しながら思った。


「この物語、ただの物語じゃない。自分の中の答えを見つけるための旅だったんだ」


そして、心の中で一つの決意が固まった。美咲は物語の次のステージへと進む決意をした。それは、千佳との絆を深め、さらに多くの人に伝えるための一歩だった。

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