第43話 レイリスは愛されているな~アドレア視点~
「レア、一体どうしたの?魔力の提供?そんなもの、私はしていないわよ。ただ、少し顔色が戻った様ね。よかったわ。それよりも、ここはどこかしら?もしかして、まだ王宮なの?」
心底嫌そうな顔をするレイリス。よほどこの場所に良い思い出がないのだろう。
「ごめんね、まだ王宮なんだ。レイリスにとって、この場所には良い思いではないよね。一旦帰ろうか?」
「良い思い出どころか、まさに地獄だったわ。頭のおかしな王太子はいるし、令嬢たちは怯え切っているし。そうだわ、思い出した!あの王太子、あの後どうなったの?この私に殴る蹴るの暴力を加えたから、さすがに頭に来て思いっきり殴ったら、泣きながら失禁していたけれど…それにしても情けない男ね。どう教育したら、あんな人間になるのかしら?」
「ジョブレスは甘やかされて育ったからね。そうか、やはりジョブレスがレイリスを傷つけたのだね。大丈夫だよ、あいつはただではおかないから」
僕の可愛いレイリスに暴行を加えるだなんて。やはり生かしてはおけないな。とはいえ、レイリスの事を考えると、この場から一刻も早く去る事が専決だ。
すっとレイリスを抱きかかえ、部屋から出る。まだ大騒ぎになっている様で、怒号や泣き声が飛び交っている。さらに助け出された令嬢たちが、次々と自分の家の馬車に乗せられ帰っていく姿も。
「あら?あの子、よかったわ。体調が悪そうにしていたから心配していたのよ」
レイリスの視線の先には、護衛に抱きかかえられ連れ出されるメリーア嬢の姿が。隣には心配そうに寄り添う、身重なゴーレスの妻と、妻を心配そうに見つめるゴーレスの姿も。
どうやらレイリスも、彼女を心配していた様だ。他人には興味がありませんという顔をして、意外とお節介なところがあるレイリスらしい。まあ、僕もレイリスのお節介に助けられた人間の1人だけれどな。
今はそんな事、どうでもいい。早くレイリスをここから連れ出さないと。そう思い、馬車に乗り込んだ。さすがに今日は、伯爵家に送っていこう。そう思っていたのだが…
「あら?道がおかしいのではなくって?公爵家はこっちの道ではないはずよ」
「伯爵家はこっちであっているよ。今日は疲れているから、ゆっくり休んでくれ」
「どうして伯爵家なの?私はレアの家に行きたいわ。きっと夫人も心配しているだろうし。何よりも王宮のお料理、あんまり美味しくなかったのよね。私はやっぱり、レアの家の料理が一番好きだわ」
確かにレイリスは、僕の家の料理をとても気に入ってくれていた。自分の家よりも、僕の家の方がいいと言ってくれたことが、なんだか嬉しい。
「それじゃあ、すぐに僕の家に向かおう。きっとレイリスが我が家に来たら、母上も喜ぶよ。料理長も、沢山美味しい料理を作ってくれるはずだ」
「それは嬉しいわ。レアの家のお料理は、何を食べても絶品なのですもの」
それはそれは嬉しそうにレイリスが笑った。やっぱりレイリスには、こうやって笑っていて欲しい。
そっとレイリスを抱き寄せた。レイリスの温もり、落ち着くな…
屋敷に着くと、心配そうな母上が飛んできたのだ。
「アドレア、レイリスちゃんは…て、レイリスちゃん、よかったわ!無事だったのね。とても心配していたのよ。可哀そうに、そんな苦しそうなドレスを着せられて。すぐに着替えを準備するわね。それから、お料理とお菓子を準備しないと。さあ、レイリスちゃん」
レイリスを見た母上が、甲斐甲斐しく世話をする。レイリスもなんだか嬉しそうだ。なぜか母上とレイリスは、非常に仲がいい。家ではいつも、2人がデザインしたお揃いの服を着て生活しているくらい。
正直僕は面白くないが、レイリスが嬉しそうだからまあいいかと思っている。レイリスが着替えている間に、すぐに料理長に指示を出し、料理の準備をしてもらった。
どうやら料理長たちは、レイリスがいつ帰って来てもいい様にと、予め準備をしてくれていた様だ。
「レイリス様は、本当に美味しそうに食べて下さるので、私共も作り甲斐があります。レイリス様が辛い環境に置かれていたと伺いましたので、レイリス様のお好きなお料理を沢山準備しました」
そう言って、嬉しそうに料理を仕上げていく料理長たち。
料理長たちだけではない。なぜかメイドたちも、嬉しそうにレイリスの後を付いて歩いている。いつの間にかレイリスは、皆に好かれていた様だ。
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