第50話
そこに、一人の女性が正面の自動ドアから入ってきた。
スリムジーンズ姿ですらりとした身体つき。
髪はセミロングで艶があり、凛としたたたずまいだった。
薄手の白いスプリングコートを羽織り、トップスは黒。
彼女はフロント係にかるく会釈してにっこりしてみせてから、ロビーにいた皆月たち三人に速足で歩み寄ってきた。
奏がうっそりと片手をあげて挨拶する。
「おう、アサミさん」
皆月と
女性、アサミは腰に両手を当て、仁王立ちのようなポーズで男三人を見下ろした。
「んー……、もしかして何か取り込み中なのかな?」
別に怒っていたりする様子ではなく、どちらかというとのんびりした口調だ。
奏が、
「まあね」
と言ってから、
「でももう終わった」
と、勝手に話を終わらせた。
そうして、奏は立ち上がった。巨体なので、立ち上がると身長百六十cmくらいのアサミとの身長差が目立つ。
「じゃあ古波津さん、そういうことなのでもうしばらく涼太を借ります。涼太、こっちはアサミさんだ。会うのは初めてだったな 」
女性はローズピンク系のリップがよく発色しているぽってりした唇をほころばせた。
「キミが涼太くんか~、奏くんから前に話は聞いてたけど、会えて嬉しいな。よろしくね」
「あ、どうも……」
と、応じつつ、皆月は自分も立ち上がるべきか迷った。
この女性が、
霊能力者というものにそもそも皆月はこれまで会ったことがないが、アサミは別段、奇抜な服装もしていないし奇妙な言動をすることもなく、普通の若い女性に見えた。皆月が勝手に有していた霊能力者のイメージとはだいぶ異なる。
雪哉があわてたように
「いや待ってください、そういう訳には……」
と、言いかける。
アサミは、
「こちらのおにーさんは?」
と、奏を見た。
「この人は涼太の
と、奏。
「事情は知っているの?」
「今、おおむね全部話したところだ」
「ふーん」
と、アサミは考え込むように、かるく握った手を細いあごのあたりに当てた。
と、コートの袖口の位置が少しずれ、彼女の手首を取り巻くように青灰色の曲線が連続しているタトゥーがその肌に入っているのがちらりと見えた。
皆月は少し驚いた。タトゥーをしている女性は珍しい。皆月は教師だから、身近な同僚なんかの中には、もちろん男女ともにタトゥーをしている者はいない。彼女に何か変わっている点があるとすればそのタトゥーだけだった。
「んー……そうね。帰ってもらったほうがよさそう」
と、アサミ。
「そういう訳にはいかないんですが」
と、言いながら雪哉はそわそわと眼鏡をかけ直している。アウェイな雰囲気を感じているようだった。
「でもさ」
と、アサミが、くっきりとアイメイクをした大きな目で雪哉を見つめた。
「あなたは予定外だから、あなたの命の保証をできないわ」
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