第32話

「たっ、拓海っ!」






あたしの大声に、家に入る寸前の拓海が振り向いた。




「……おぅ、なんか用か?」




拓海の手にはいかにもチョコがいっぱい入ってます、な紙袋。







うっ……




でも、負けない。




一世一代の勇気だよ、可奈!







ぶるぶると震える声で、




「こっ、これ、あたしの気持ちだからっ」




そう言って3枚の板チョコを拓海に押しつけた。







いつにないあたしの勢いに、あっけにとられていた拓海だったけど、




「あ、……サンキュ」




とだけ答えて、それを受け取ってくれた。







あたしは早くこの緊張から解放されたくて、




「じゃっ、おやすみっ」そう告げて、逃げるように家の中に駆け込んだんだ。

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