第19話
「ごめんなさい…」
小さくそう言って、
あたしの右手を包んでいる雅弘の左手に、あたしの左手を重ねた。
「……伊織」
あたしを呼ぶ、愛しい声につられて顔をあげると、
すごく柔らかく微笑む雅弘がいて、
「キス……しよっか」
って言ったんだ。
あたしは、びっくりして、
「ぅえっっ?」
って、色気のない反応をしてしまった。
「はは、伊織、さっき言っただろ?
“キスもしてくれない”って」
確かに言ったけど。
「恥ずかしいよ、そんなこと言われたら」
「そっか、ゴメンゴメン。
じゃ、これでどう?
……目、閉じて?」
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