内なる声に従って
朧
第1話
ずっと君が好きだった
初めて会った時から【冬の稲妻】のように脳天ハンマー
現実とは思えないほどの歓喜を覚えた
君も同じだと言ったね
あなたが好き
あなたしか愛せない
愛してる愛してる愛してる
繰り返し僕に呟いた
君はストレートに物言う人だった
オブラートに包むような言葉を放たない人だった
僕は君に嘘はつかないと言い、君もそう言ったね
この恋は続くと思ってたよ
君の笑顔は本物だったし、僕の弱さをも好きだと言ってくれたね
僕の病んだ兄をも慈しんでくれた君
兄が死んだ日、僕以上に号泣した君
「泣いてよ。涙を流せば少し楽になれるわ。あなたの涙はわたしが唇で拭うから。」
聖母のやうに見えたんだ
何度 同じ季節を過ごしたろう
春は桜の花びらを纏い
夏は向日葵畑でピースサイン
秋は落ち葉を山盛りにしてはしゃぎ
冬は雪合戦
少女のやうな笑みこぼし
聖母より童女のやうに喜ぶ君
永久に続くと信じて疑わなかった愚かな僕
もう泣けないよ
君の顔に陰さした時ようやく気付いたんだ
アイツに惚れてると
内なる声に従って
女々しくアイツの部屋に向かったさ
アイツはいい男だから
僕の親友だから!
階段上る足が重かった
内なる声が間違いであれと願ったよ
扉の前で深呼吸してトン トン トンとノックした
扉が開き、驚くアイツの顔
その背後に男のシャツ着た君が居る
見馴れたアイツのシャツさ
君は俯いてごめんなさいと小さな声
アイツは畳に土下座してスマン‼️と叫んだ
「いや、ごめんな。急に来てさ。」
一言発し階段を駆け降りる
アイツはいい男だから
アイツはいい男だから
裏切るなんて思わなかったさ!
君はいつからアイツに惚れたのかい
この秋、落ち葉を山盛りにして笑った
君の目は僕に向けてたよな
君の顔 陰りゆく日々を思い出せないんだ
君はいっとう いい女だから僕を悲しめたくなかったんだろ
愚鈍な僕を許しておくれ
内なる声に耳塞いでいたのさ
さっさと僕を置き去りにすればよかったんだよ
今僕の内なる声に従えばあの映画のように君を拐うさ
馬鹿だろ
ハッピーエンドにならないこと分かっているのにさ
………女々しくて女々しくて!
嫌な歌が聴こえて来た
内なる声に従って 朧 @oboto
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