パート6: 守りの決断

店主は俺が持ってきた三つの防具を順に手に取り、品定めするように眺めた後、低い声で説明を始めた。


「…そのチェストプレートとショルダーガードは、鋼鉄製だ。安物のように鉄板を打ち出しただけじゃない。ちゃんと鍛造してあるから、見た目より軽く、それでいて硬度は高い。矢や剣による攻撃なら、そう簡単には貫通しないだろう」


(鍛造された鋼鉄製…!)


武器屋の親父さんも言っていたが、やはり作りがしっかりしているものは違うらしい。


「重さは…まあ、それなりにあるが、全身鎧に比べれば動きやすさは確保できる。革鎧の上から着るのが一般的だな」


「なるほど…値段はいくらですか?」


「セットで金貨1枚と銀貨80枚だ」


(金貨1枚と銀貨80枚…! 安くはないな…)


予想はしていたけど、やはり結構な値段だ。

次に店主はカイトシールドを手に取った。


「こっちは標準的なスチール製カイトシールド。ラウンドシールドより防御範囲が広く、特に突き攻撃や矢に対する防御力が高い。耐久性も木製とは比べ物にならん」


「重さはどうです? 今、木製のラウンドシールドを使ってるんですが…」


「ラウンドシールドよりは重いが、慣れれば問題ない範囲だろう。シールドバッシュにも十分使える」


(よし、それなら問題ないな)


「で、こっちは?」


「銀貨90枚だ」


(銀貨90枚…)


鎧と盾、合わせて…金貨1枚と銀貨170枚。

銀貨100枚で金貨1枚だから、合計で金貨2枚と銀貨70枚か。


(俺の残りの予算は…金貨2枚と銀貨数十枚だったはずだ)


ギリギリだ。ほぼ全財産を使い切ってしまう計算になる。

ポーション代とか、次の依頼までの生活費を考えると、少し不安になる額だ。


(でも…)


俺はグレイウルフに足首を噛まれた時の痛みを思い出した。

あの時、もっと良い鎧を着ていれば、怪我すらしなかったかもしれない。

防御力は、生存に直結する。ここでケチるべきじゃない。


(武器も新しくしたんだ。防具も、ここで一気に強化するべきだ)


俺は覚悟を決めた。


「分かりました。このチェストプレートとショルダーガード、それとこのカイトシールド、全部ください」


俺の言葉に、店主はわずかに眉を動かしたが、特に何も言わず頷いた。


「…承知した。合計で金貨2枚と銀貨70枚だ」


俺は懐からなけなしの金貨2枚と、銀貨を数えて70枚を取り出し、カウンターに置いた。

これで財布はほぼ空っぽだ。


店主は代金を確認すると、防具一式を丁寧に布で包み、俺に手渡してくれた。


「毎度あり。これも手入れをすれば長持ちする」


「はい、ありがとうございます」


俺は新しい防具の包みを受け取った。

ずしりとした重みが、安心感を与えてくれる。

これで、武器も防具も一新された。

今の俺の装備は、Dランク探索者の中でも、かなり良い方になったんじゃないだろうか?


(早くこれを着て、ナイトソードを振るってみたい!)


俺は店主に軽く一礼し、高揚感を抑えきれないまま、防具屋を後にした。

財布は軽くなったけど、代わりに手に入れたこの力があれば、すぐに元は取れるはずだ!

まずは宿に戻って、新しい装備を装着してみよう。

そして、次の依頼だ!

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