パート4: 追跡者、現る

(…………)


息を殺し、窪地の縁を見つめる。

まだか…? いや、もうすぐそこまで来ているはずだ。


カサ…


微かな音。

俺が逃げてきた方向の、少し右手の茂みからだ。


(来た!)


心臓がドクンと跳ねる。

茂みが揺れ、ゆっくりと一つの人影が現れた。


(黒ずくめ…!)


フード付きの黒い革鎧に、黒いズボン。顔はフードの影になってよく見えない。

手には抜き身のショートソードを持っている。

無駄のない、静かな動き。間違いなく手練れだ。


(一人…? いや、足音は複数だったはず!)


そう思った瞬間、反対側の左手の茂みからも、もう一人、同じような黒装束の男が現れた!

こちらはダガーを二本、逆手に構えている。


(やっぱり二人か!)


左右から挟み込む気だ!

しかも、俺がここに隠れていることには、とっくに気づいている様子だった。

油断も隙もない。


二人は窪地を囲むように、じりじりと距離を詰めてくる。

その動きは連携が取れていて、まるで訓練された猟犬のようだ。


(こいつら…やっぱりただの強盗じゃないな…)


装備もそこそこ良さそうだし、何より雰囲気が違う。

暗殺者か、あるいはどこかの組織の人間か…。


(目的は…やっぱり俺か? それとも金か?)


どちらにしても、簡単に見逃してくれる相手ではなさそうだ。


俺は盾をしっかりと構え、サーベルの切っ先を、まずは右手のショートソードの男に向ける。

二人同時に相手にするのは不利だ。各個撃破を狙うしかない。


視線が交錯する。

相手のフードの奥の目が、冷たく光ったような気がした。

言葉はない。

ただ、殺気だけが、張り詰めた空気の中で濃密になっていく。


(やるしかない…!)


先に動いたのは、ダガーを持った左手の男だった!

低い姿勢から、音もなく距離を詰めてくる!


同時に、右手のショートソードの男も、俺の側面を突くように動き出した!


(挟み撃ち!)


俺は歯を食いしばり、迫りくる二つの影を迎え撃つ!

Dランクになったばかりの俺の力が、どこまで通用するのか…!

今、ここで試される!

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