心の教育は人間にしか出来ない

　ビル・ゲイツが「ＡＩが医師や教師をも代替する時代が来る」と言ったそうですが、わたしはそうは思いません。ある部分は代替出来るでしょう。でも、心に関する部分はやはり人間でないと対応出来ないと、わたしは思います。

　教育に関して言うならば、「授業」だけならばＡＩでいいかもしれません。過去問の検索もあっという間に出来るだろうし、過去問に似た問題を作るのも簡単でしょう。

　でも、学校という現場は勉強だけを教える場所ではありません。

　勉強を通して、心も育てているとわたしは思います。

　授業の中で、それから学校生活の中で、教師を通して人間そのものを学んでいると思います。もちろん、いい先生ばかりじゃないです。だけど、それ自体が既に学習であると思うのです。色々な先生がいた方がいいのです。人間くさくて。

　もし、学校現場がＡＩ教師だけになったら？

「人間」は育つのでしょうか。果たして。

　人間はどんどん、機械の一部のような存在になっていくのではないでしょうか。

　一人の人、ではなくて、ＡＩ社会を作る「部品」となってしまう気がします。

　そこには感情はなく感動もなく、芸術もなく想像も創造もありません。

　もしも、そういう社会を作りたいのであれば、ＡＩ教師にすればよいと思いますが。でも、それって「生きている」って言えるのでしょうか。

　医療現場も同じだと思います。

　受診した場合、先生との短い時間でのやりとりで心が落ち着いたりすると思うのです。ＡＩ医師だけになったら、不安とかそういう心の不安定さをどのように解決したらいいのでしょうか。いや、そのころには人間の心も平板化して、何も感じなくなっているのでしょうか。それは果たして「人間」なのでしょうか。

　それに、そもそも大前提として、ＡＩもミスをすることがある、ということが抜けている気がします。

　長年の経験から来る、医師の直感はとても大事だと思います。もしも、医療現場に人間がいなくなったら、誤診をしても見抜けないまま過ぎていってしまうと思います。それは大変危険なことだと、わたしは考えます。

　ＡＩが文章を書く時代です。ＡＩが絵を描く時代です。

　でもやはり、わたしはまだ、人間の方が勝っていると思います。

　人間の持つ不安定さとか揺らぎとか。弱さも。

　そういうものこそ、大切だと思います。

　いつも正しくはいられない。

　そういう人間だからこそ、心を育てることが出来るのだと、わたしは信じているのです。

　　　　　　　　　　了