幕末暗殺伝

wkwk-0057

第1話

――慶応3年(1867)京都

京の町は夜でも静かでは無い。

花街では芸妓の笑い声が響く。


だが夜の闇とは別の闇も蠢いている。



路地裏

「あんさん……運が悪かったなぁ……まぁ言うても、いつかは死ぬ運命どすえ。そんなもん、関係ありんす。」


右手に持っていた刀で首を掻っ切る。

血が刀に着き、あぶらとり紙で拭き取る。


「ふぁ〜……眠たいわぁ……そろそろ帰って寝まひょか。」


そう呟き、刀を鞘に納め帰路を辿った。


―――――――――――――――――


ある店に人が入っていく。

「片桐!こっちに茶もって来てはり」


「すんまへんなぁ。手ぇ空いてへんのどす。」


京都の人気店、【月影】

甘い和菓子と苦味の奥に美味さがある独特な茶が人気で一目置かれる茶屋となった。



忙しく動き続ける片桐玄一


「忙しゅうて、休む間もおへんわぁ……」


そう呟いた瞬間

「おーい!玄一!」


「んあ? 成瀬......?」


扉を開け入ってきたのは如何にもやんちゃそうな服装をした青年だった。


「良い情報集めたんや。聞いていくか?」


「お前さん、また余計なことしてはるんちゃいます?」


「周りに迷惑やぁ、て何回言うたら分かるどすか?」


「おぉ……厳ついな」


「なんやそれ……で、情報は?」


ニヤとしてこちらを見る。


「浪人姿の人が夜人を殺し回ってるらしいで」


「そうなんやなぁ……仲間読んではりますの?」


「今からだよ」


「わかった」



―――――――――――――――――


闇鴉【ヤミカラス】

京の町では知名度は高い暗殺者組織。だが何処にあってどんな人か等の詳細は無し。そんな組織は有名店茶屋の

【月影】だった

片桐玄一も闇鴉の一員だった。



「ここ……?」

噂の浪人が出てくるのは河川敷だった

闇が体にまとわりつき何も見えない。


だが分かる。確実に目の前に誰かいると。

目が慣れ確認してみると

所々破れている無地の着物。

噂通りの浪人だった。

刀を握りしめ

「はぁ……はぁ……」

と呼吸をしていたのだった


「ここ……誰の物かわかってはる?」


「……」


刀を抜いた。

月夜に照らされ

玄一の顔が照らされる。

端正な顔立ちで泣きぼくろが特徴のただの人。


「京の町を脅かすのなら、この私がお前さんを殺しまひょか」


その声は怒りに満ちており、

空気が張り詰める程の殺意が飛んでいたのだった

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