第3話

「これから48時間の間は此処に留どまる事になっとりま、その後は49日の間、仏さんになる為に祇園寺と竹林寺の間を修業して巡って貰います、それが終ったら晴れてあの世へ旅立つわけでんな。」

「そんな…輝(ひかる)にだって、さよならも言ってない……」

公司は急に淋しくなって、ふと下を見下すと、急いで駆け付けて来た幼馴染の輝が、自分の横に座ってボロボロと涙を流している。

「輝……輝、此所だよ、俺は此所に居るよッ!! 」

公司は大声で叫んだ。

「無駄だす。あんさんの声は聞こえまへん」

「そんな……だって…あいつは泣虫で、淋しがり屋で……このまま放っとけ無いよ……ほっとけない……」

公司は切なくて、泣きたくなった。

「そうだ!あんた地蔵さんだろ?菩薩様なんだろッ!? 」

「さいだす。」

「だったら慈悲深いよな、な?」

「そうだんなぁ、弥勒はん程やおまへんけど……」

「だったら霊界へ連れて行くのもう少し待ってくれ…せめて輝が卒業するまで……」

「卒業までと言いますと、1年半以上でんな……それは無理でおます。霊体のまま1年以上下界に留まると地縛霊になって成仏でけん様になりまっさかい…」

「だったら1年だけ待ってくれ、な?頼むよ…この通り。」

公司は両手を合せて拝み倒した。

「わての一存では決められまへんよって、それにもう魂の尾も切ってしもたし……」

「頼むよ……」

公司は尚も食い下がる。

それを見て哀れに思ったのか、地蔵菩薩は

「ちょっと皆と相談してみまっさかい、暫くここで待ってておくれやす。」

と言い残して何処かに消えてしまった。

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🍀幸福の見分け方🍀~僕の有得ない日常~ motomaru @motomaru7

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