第40話

「え?良いことって……」

愛丸は思わず聞き返した。

「それは後でお教えします。大丈夫、上手くやりますから心配しないで下さい。さ、行きましょう」

心配顔の愛丸に向って零はまたニッコリ笑った。

「零がそう言うのなら任せるよ」

愛丸は零を信じて任せることにした。

零も軽く頷いて愛丸に応えた。

「じゃ、戻ろうか」

 愛丸は零と連れ立って家へ向った。

戻った二人がダイニングへやって来ると、清一郎が「二人共何時まで待たせるつもりなんだ?」と待ちくたびれたように言った。

「ワリィ、ちょっと話してたもんだから……」

愛丸は愛想良く弁解してから手を洗って席に着いた。

 食事を始めてから愛丸は零の方をチラリと見るが、零はどう見ても普通にご飯を食べているようにしか見えなかった。

愛丸にはそれが不思議でしょうがないのだが、ひとまず問題は回避したようだ。

「愛、そろそろ時間だぞ」

食事が終る頃、清一郎が合図するように言った。

「分ってる。じゃあ俺出るけど、後頼んだよ」

愛丸は最後の一口を急いで掻込むと、鞄を掴んで玄関へ向った。 その後を零がピッタリ寄り添うように付いて来る。

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