第9話

「あ、これ明陽さんのお茶……」

 健介がハッと気付いて、申し訳無さそうに言った。

「別に良いよ、僕は健介の貰うから」

明陽はそう言うと、何の躊躇もせずに健介のお茶を手に取って口に運んだ。

(明陽さんって、こういうトコおおらかと言うか何と言うか……なんか可愛い人だなァ……)

健介はそう思って、明陽を見ていた目を細めた。

「そうだ!健介、明日久しぶりに学食行ってみない?」

 明陽が何を思ったのか、突然思い付いた様に言った。

「え、学食?でも……」

健介は躊躇していた。

そんな所へ堂々と明陽と一緒に行っても良いものだろうかと思っているのだ。

「大丈夫、聖は明日資格試験で居ないし、たまには覗いてみようよ?」

「え、あ、はい分りました……」

健介はあまり乗り気ではなかったが、明陽がにこやかに笑ってそう言うので、渋々承知した。


 次の日、昼休になるとさっそく明陽がやって来て、健介の教室を覗いた。それだけで教室にざわめきが起こる。

 つまり明陽はそれだけ皆の憧れの的と言う事なのだ。

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